向精神薬の適正使用について

水上 勝義
筑波大学大学院人間総合科学研究科

 高齢者では、代謝、排泄能の低下、併用薬剤数の増加、体脂肪率の増加、感受性の上昇などから向精神薬の有害事象が現れやすい。また精神症状の背景は多因的である。このため非薬物療法を優先すること、より安全性が高い薬剤を少量から開始することが原則である。
 加齢により睡眠時間は短縮する。このため日中の生活に支障を認め治療対象であるかの診断が必要である。睡眠衛生指導をまず行い、必要に応じて薬物療法を考慮する、高齢者に対しベンゾジアゼピン系薬剤は、認知機能低下、転倒・骨折、日中の倦怠感のリスクがあり、とくに長時間作用型は使用すべきではない。非ベンゾジアゼピン系薬剤も転倒・骨折のリスクがあり、漫然と長期投与すべきでない。新規薬剤であるラメルテオンとスボレキサントにも併用禁忌薬剤があるので注意する。
 認知症の行動・心理症状(BPSD)に対しては、まず抗認知症薬の効果を評価する。対症治療として抑肝散など漢方薬の効果が報告されている。ただし甘草を含有する漢方薬には低K血症のリスクがある。抗精神病薬は、錐体外路症状、過鎮静、循環系の副作用のリスクがありとくに定型抗精神病薬の使用は控える。新規投与後11週から24週の死亡リスクの上昇が報告されている。また米国のガイドラインでは治療効果を認めた場合、開始から4ヶ月以内に減量・中止を検討することが推奨されている。認知症疾患のなかでレビー小体型認知症は抗精神病薬の過敏性がみられ特に副作用が現れやすい。
 老年期うつ病に対して、抗コリン作用や心血管系の副作用から三環系抗うつ薬が、また錐体外路系の副作用からスルピリドが慎重に投与すべき薬剤に挙げられる。選択的セロトニン再取り込み阻害剤は消化管出血、転倒リスクに、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤は尿閉リスクに注意が必要である。認知症のうつにはコリンエステラーゼ阻害剤が有効な場合がある。

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