研修カリキュラム
2010年6月24日改訂
基本コンセプト
カリキュラムは、老年病専門医が備えるべき以下のような資質を涵養するために必要な知識や経験をリストアップしたものである。
- 老年者に多くみられる病態、とくに老年症候群の主要な症状(誤嚥、転倒、せん妄、認知症、排尿障害、寝たきり、褥瘡など)に適切に対応し、生活の質(Quality of Life)の改善に努めることができる。
- 多くの疾患を抱える老年者に対して包括的な治療ができる。
- 老年者の終末期医療をおこなうことができる。
- 老年者施設や在宅の環境整備、チーム医療などが適切に行なえる。
- 老年者に関する基礎研究、臨床研究を理解して、Evidence -based Medicineの遂行することができる。
研修レベルのランク
知識:
A:よく理解している。
B:概略を理解している。
診察、検査手技、治療(原則として65歳以上の症例)
a:原則として経験すること(担当医として受け持つ)
b:指導医のもとに経験する(共同でもよいから受け持つ)
c:概略の知識を有すること(見学することが望ましい)
注:本カリキュラムで用いている「老年者」という用語については「高齢者」を用いるべきとする議論があったが、両者は同義であるとする立場で以前から本学会カリキュラムで用いられている「老年者」を使用した。
項目
I老年医学総論
- 老年学と老年医学
- (1) 老年学と老年医学の概念 A
- (2) 疫学A
- (3) 老年医学の意義及び専門医の役割 A
- 老化の機序
- (1) 老化の定義及び老化学説 A
- (2) 生理的老化と病的老化 A
- (3) 老化の生物学 A
- (4) 老化度の判定 B
- (5) 遺伝性早老症 B
- 老年病の臨床
- (1) 老年者の主要な疾患 A
- (2) 老年者の病態と疾患の一般的特徴 A
- (3) 要介護に至る疾患 A
- (4) 老年者の悪性腫瘍 A
- (5) 老年病の臓器相関(複合性疾患) A
- (6) 多臓器不全 A
- (7) 老年者との面談 A a
- (8) 老年者の生活指導 A a
- (9) チーム医療の進め方 A a
- (10) 老年者の看護 A
- (11) 老年者の介護 A
- (12) 退院計画 A a
- (13) 医原性疾患 A a
- 老年者に特有な症候
- (1) 老年症候群 A a
- (2) 意識障害 A a
- (3) 失神 A a
- (4) 認知症 A a
- (5) せん妄 A a
- (6) 抑うつ A a
- (7) 頭痛 A a
- (8) 不眠 A a
- (9) めまい A a
- (10) 手足のしびれ A a
- (11) 言語障害 A a
- (12) 腰痛 A a
- (13) 歩行障害 A a
- (14) 転倒・骨折 A a
- (15) 尿失禁 A a
- (16) 便秘 A a
- (17) 寝たきり A a
- (18) 廃用症候群 A a
- (19) 褥瘡 A a
- (20) 脱水 A a
- (21) 浮腫 A a
- (22) 嚥下障害・誤嚥 A a
- (23) 吐血・下血 A a
- 老年者の救急疾患と対策
- (1) 心血管系疾患 A a
- (2) 脳血管障害 A a
- (3) 呼吸器疾患 A a
- (4) 消化器疾患 A a
- 老年者の検査値の変化と意義
- (1) 老年者の基準値 A
- (2) 異常値の評価 A
- 老年者の栄養
- (1) 老年者の栄養状態の特徴 A
- (2) 老年者の栄養状態の評価 A a
- (3) 健康維持のための栄養 A
- (4) 老年者の栄養療法 A a
- (5) 老年者の過栄養にたいする栄養療法 A a
- (6) 老年者の低栄養 A a
- 老年者薬物療法
- (1) 老年者の薬物動態と薬物力学 A
- (2) 老年者の薬物処方上の留意点 A
- (3) 老年者の薬効評価 A
- (4) 老年者と漢方 B
- (5) 服薬指導 A a
- 予防医学
- (1) 老化・老年病の危険因子と予防 A
- (2) ライフスタイルの改善 A
- (3) 生活習慣病と老年病 A
- 老年者の生活機能障害の評価
- (1) 老年医学的総合機能評価(CGA) A a
- (2) 身体的機能評価 A a
- (3) 精神心理機能評価 A a
- (4) 介護者、サービス利用、社会環境に対する総合評価 A
- (5) 老年者のQOL A
- 老年者介護と医療
- (1) 医療サービスと福祉サービス A
- (2) 施設介護と在宅介護 A b
- (3) 訪問診療(在宅診療)A b
- (4) 介護保険制度 A a
- (5) 高齢社会を支える医療保険制度 A
- 老年者介護とリハビリテーション
- (1) 老年者介護の特徴と実際 A a
- (2) 運動療法 A b
- (3) 作業療法 A b
- (4) 言語療法 A b
- (5) 嚥下障害の介護とリハビリテーション A b
- (6) 脳血管障害後遺症の介護とリハビリテーション A b
- (7) 骨折後の介護とリハビリテーション A c
- (8) 認知症を有する老年者の介護とリハビリテーション A b
- (9) 廃用性症候群の予防 A b
- (10) 介護保険による在宅介護とリハビリテーション A c
- (11) 介護予防とリハビリテーション A c
- (12) 支援福祉機器 B
- 老年者の終末期医療と医療倫理
- (1) 終末期医療 A a
- (2) 安楽死と尊厳死 A
- (3) 事前指定書(advance directive) A
- (4) 成年後見制度 A
- (5) ホスピス 緩和ケア A b
- 老年者と精神医療
- (1) 行動・心理症状(徘徊、妄想、暴言、暴行他) A a
- (2) 身体抑制、薬物による鎮静 A
- (3) 虐待 A
- (4) 概日リズム障害 B b
- (5) コミュニケーション障害 A a
- (6) 向精神薬の使用 A a
- その他
- (1) 医療経済 A
- (2) EBM(evidence based medicine) B
- (3) 鍼灸治療と補間代替医療 B
- (4) 高齢者医療に関する法律 A
- (5) 医療安全・医療事故対策 A a
Ⅱ 老年病各論
- 精神疾患
- (1) 加齢変化と精神疾患 A
- (2) 老年期うつ病 A a
- 神経疾患
- (1) 加齢変化と神経疾患 A
- (2) 脳血管障害 A a
- (3) 認知症の診断 A a
- (4) アルツハイマー病 A a
- (5) 脳血管性認知症 A a
- (6) レビー小体病 A a
- (7) その他の認知症 A b
- (8) パーキンソン病 A a
- 呼吸器疾患
- (1) 加齢変化と呼吸器疾患 A
- (2) 肺炎 A a
- (3) 肺がん A b
- (4) 慢性閉塞性肺疾患 A b
- (5) 肺結核 A b
- (6) インフルエンザ・感冒 A a
- (7) 呼吸不全 A b
- 心臓疾患
- (1) 加齢変化と心臓疾患 A
- (2) 虚血性心疾患 A a
- (3) うっ血性心不全 A a
- (4) 不整脈 A b
- (5) 弁膜症 A b
- 血圧異常と血管系疾患
- (1) 加齢変化と高血圧、動脈硬化 A
- (2) 高血圧 A a
- (3) 低血圧 A a
- (4) 末梢動脈疾患 A b
- 消化器疾患
- (1) 加齢変化と消化器疾患 A
- (2) 胃腫瘍 A a
- (3) 大腸腫瘍 A a
- (4) 肝硬変 A a
- 腎・泌尿器疾患
- (1) 加齢変化と腎・泌尿器疾患 A
- (2) 排尿障害 A a
- (3) 前立腺疾患 A a
- (4) 腎不全 A a
- (5) 加齢男性・性腺機能低下症 A c
- 内分泌・代謝疾患
- (1) 加齢変化と内分泌・代謝疾患 A
- (2) 糖尿病 A a
- (3) 甲状腺疾患 A a
- (4) 脂質代謝異常 A a
- 骨・運動器疾患
- (1) 加齢変化と骨・運動器疾患 A
- (2) 骨粗鬆症 A a
- (3) 変形性骨関節疾患 A a
- 血液疾患
- (1) 加齢変化と血液疾患 A
- (2) 貧血 A a
- (3) 悪性リンパ腫 A c
- (4) 骨髄異形成症候群 A c
- (5) 多発性骨髄腫 A c
- (6) 白血病 A c
- 感染症・免疫・膠原病
- (1) 老年者の感染防御と感染症 A
- (2) 老年者に多い感染症とその病原体 A a
- (3) 関節リウマチ A a
- (4) その他の膠原病 A b
- 感覚器障害
- (1) 加齢と感覚器の変化 A
- (2) 老人性白内障 A c
- (3) その他の視覚障害 A c
- (4) 聴力障害 A c
- (5) 味覚障害 A c
- 皮膚・口腔疾患
- (1) 加齢と皮膚の変化 A
- (2) 掻痒症 A b
- (3) 帯状疱疹 A b
- (4) 薬疹 A b
- (5) 口腔ケアと歯周病 A c
- 外科疾患
- (1) 老年者外科疾患の特徴 A
- (2) 術前評価 A b
- (3) 術後管理 B c
- (4) 救急手術の適応と予後 B b
- (5) 脳、神経疾患の手術適応 B c
- (6) 循環器疾患の手術適応 B c
- (7) 消化器疾患の手術適応 B c
- (8) 呼吸器疾患の手術適応 B c
- (9) 内視鏡的手術の適応 B c
- (10) 麻酔と覚醒 B c