事例集

症例1かかりつけ医から認知機能評価を依頼され、他の慢性疾患(複数の医療機関に受診)を併せ持ち、服薬管理にも問題がある独居高齢者の事例

Scene1

 84歳女性。地方都市で夫と2人暮らしだったが、半年前に夫が急死し独居となった。夫の葬儀時に親類の名前がわからず、スケジュールが把握できないといった様子があり、関東在住の子供らが違和感を覚えながらもサポートした。四十九日に再度子供が自宅を訪問したところ、台所に食べかけの惣菜が放置されるなど、自宅が雑然とした状況だった。夫の銀行口座の解約手続きを依頼していたが、通帳や印鑑がどこにあるかわからず、混乱して涙を流した。かかりつけ医に相談すると、抑うつ状態と言われ、抗うつ薬が処方された。その2ヶ月後に子供が再度訪問したが自宅の状況には変化はなく、本人は見るからに痩せていた。再度かかりつけ医を受診したところ血圧が172/86 mmHgと高値であり、うつ病または認知症の疑いで老年病専門医へ紹介となった。
 既往症として腰椎椎間板ヘルニア手術と心筋梗塞(経皮的冠動脈ステント留置術、68歳時)の自己申告があり、紹介状にはこれに加え、慢性うっ血性心不全、うつ状態の病名と、処方薬8剤の記載があった。お薬手帳を見ると、その他に4クリニック(消化器科、整形外科、眼科、皮膚科)から10剤の処方歴があり、内容から何らかの整形外科疾患、便秘症、神経因性膀胱、不眠症、爪白癬、白内障、ドライアイを併存していると推察された。しかし本人も子供らも正確な病名や受診頻度は把握しておらず、子供らによると、自宅には薬袋に入ったままの残薬がたくさんあり、各薬剤の残薬数にも偏りがあるとのことだった。
 診察時、本人の礼節は保たれており、夫の死後、落ち込むことはあるが、暮らしや健康上大きく困っていることはない、と話した。子供らによると、子供の滞在中は一緒に食事を摂り、食欲が無いわけではなさそう、とのことだった。朝はなかなか起きて来ず、受診日も予約時刻に間に合わないため、朝食を食べずに来院していた。朝の薬を飲んだか尋ねると、本人は飲んだと言うが、子供は飲んでいないようだと答えた。

投薬内容

アムロジピン5mg 1T
分1 朝食後
アジルサルタン20mg 1T
分1 朝食後
スピロノラクトン25mg 1T
分1 朝食後
バイアスピリン100mg 1T
分1 朝食後
アトルバスタチン2.5mg 1T
分1 夕食後
ファモチジン20mg 2T
分2 朝夕食後
オキシブチニン1mg 3T
分3 毎食後
スルピリド50mg 3T
分3 毎食後
セレコキシブ100mg 2T
分2 朝夕食後
テプレノン50mg 2T
分2 朝夕食後
酸化マグネシウム330mg 3T
分3 毎食後
タカヂアスターゼ・生薬配合剤3.9g
分3 毎食後
センノシド12mg 2T
頓服 便秘時
エチゾラム 0.5mg 2T
分2 朝夕食後
ゾルピデム5mg 1T
分1 眠前
ピレノキシン点眼液0.005%
1日4回 両眼
ジクアホソルナトリウム点眼液3%
1日6回 両眼
エフィナコナゾール液10%
1日1回 両足爪
診察所見

衣服は汚れが目立ち、体臭が感じられた。円背で、慢性腰痛があるという。両足首に軽度の圧痕性浮腫を認めた。皮膚は乾燥し、足爪は長く伸び、肥厚・混濁があった。部分義歯のサイズが合っておらず、歯垢が目立つ。特記すべき神経学的異常所見はみられなかった。

血圧186/106mmHg, 脈72bpm・整
身長 145cm, 体重 39kg(通常身長150cm、体重45kg)
握力 右12.6kg, 左10.1kg、下腿周囲長29.0cm
6m通常歩行速度 0.9m/sec
Mini Mental State Examination(MMSE):20点(時間見当識-4 遅延再生-3 計算-3)
Mini Nutritional Assessment(MNA)Short Form:3点

ADL

Barthel Index 95/100点(整容で失点)
Lawton IADL 5/8点(買い物、調理、服薬管理で失点)

血液検査

WBC 5600/µL (Lym 1500/µL)、RBC 395万/µL、Hb 12.2 g/dL、PLt 18.2万/µL、CRP 0.06 mg/dL、T Bil 1.6 mg/dL、ALP 129 U/L、γGTP 18 U/L、AST 26 U/L、ALT 21 U/L、BUN 14 mg/dL、Cre 0.95 mg/dL、TP 6.2 g/dL、Alb: 3.4 g/dL、Na 132 mmol/L、K 3.9 mmol/L、 Cl 106 mmol/L、Mg 2.4 mg/dL (基準値:1.8-2.4)、Tch 160 mg/dL 、TG 56 mg/dL、LDL-C 109 mg/dL、HDL-C 86 mg/dL、Glucose 95 mg/dL、HbA1c 5.7%、FT4 1.14 ng/dL (0.90-1.70)、
FT3 2.55 pg/mL (2.30-4.00)、TSH 0.974µIU/mL (0.50-5.00)、BNP 56.7 pg/mL、vitaminB1 45 ng/mL (26-58)、vitaminB12 233.9 pg/mL (180.0-914.0)、葉酸 10.8 ng/mL (4.0以上)。

Scene1 Questions

  • 1) 考慮すべき画像検査を挙げよ。
  • 2) 特に中止または変更を考慮すべき薬剤を挙げよ。