事例集

症例1かかりつけ医から認知機能評価を依頼され、他の慢性疾患(複数の医療機関に受診)を併せ持ち、服薬管理にも問題がある独居高齢者の事例

Scene2

 外来にて追加検査を行った。頭部MRIでは両側側頭葉内側で軽度の萎縮、基底核領域にラクナ梗塞を、脳血流シンチグラフィでは後部帯状回・楔前部・頭頂側頭連合野での集積低下を認めた。腰椎レントゲンにてL2, 3に魚椎変形を認め、DXAでは四肢骨格筋指数4.9kg/m2, 大腿骨頚部YAM 75%で、転倒リスク評価表得点は12点。MNAアセスメントの追加(full MNA)で、総合評価値は8点であった。

<神経心理検査結果>

  • Geriatric Depression Scale15(GDS):4/15点
  • Vitality index:4/10点
  • Neuropsychiatric inventory Questionnaire(NPI-Q):10点(内訳:妄想1 興奮・攻撃性1 憂鬱・不快2 不安2 アパシー・無関心3 被刺激性・不安定1)
  • Zarit介護負担尺度 短縮版(J-ZBI_8):11点

 本人に病名を告知し、今後の生活の希望を聞いたところ「少なくとも夫の1周忌が過ぎるまでは家の片付けもあり、今の家に住み続けたい。その先のことは困ったら考える」という返答であった。「日常生活には困っていない」と発言したが、多病であり、服薬を含めた健康管理サポートが望ましい状態であること、遠方の子どもらの援助は長期的な継続が難しいことを共有し、介護保険申請手続きを実施して訪問看護と食事宅配による体調観察・服薬確認・食事提供からサービスを導入した。各クリニックへ診療情報提供し、重複薬や慎重投与薬の中止・変更と、必要な薬剤の開始を依頼、歯科クリニック受診も手配した。
 2ヶ月後、食事と内服管理が安定したことを確認した後、抗認知症薬を開始した。介護区分は要介護1の判定となり、訪問サービスに慣れてきた段階で通所デイサービスへと誘導し、ライフスタイルが安定した。総薬剤数は18剤から10剤に減少し、内服回数は昼・眠前の2回となった。薬剤中止後身体・精神症状の変化は生じず、初診4ヶ月後でGDS 4/15, Vitality index 8/10点、NPI-Q 4点、J-ZBI_8 9点と、意欲の改善がみられたが、子供の介護負担感は横這いであった。体重や下腿周囲長に変化はなかったが、MNA総合評価点は8点から19点に改善した。
 再度本人に今後の生活の希望について尋ねると「今まで住み続けた土地で暮らしたいが、遠くに住む子供らには迷惑をかけたくない。どうしたらいいんでしょうね」と答えた。今後認知症が進む可能性と、本人も子供らも安心して過ごせる場所を話し合っていくこと、様々なサポートで希望を支えることが可能なことを本人・家族・ケアマネージャーと共有し、かかりつけ医へ申し送り治療継続することとなった。

Scene2 Questions

  • 1) 本症例の認知機能障害の原因疾患と、その重症度(軽度・中等度・重度)を答えよ。
  • 2) ACP(Advance Care Planning)について、正しいものを2つ選べ。
    1. 医療・介護を受けていない段階では不要であり、本症例のような診断時や施設入所時などに行う。
    2. ACPファシリテーターは医師であることが望ましい。
    3. ACPは基本的に判断能力を有する人を対象とする。
    4. 本人の意思決定能力が無いと判断される場合、任意後見人・成年後見人が代弁者として最適である。
    5. 「人生会議」とは厚生労働省がACP の普及・啓発の一環として選定した愛称であり、11月30日は「人生会議の日」である。