理事長ご挨拶
一般社団法人 日本老年医学会 理事長 秋下雅弘
(東京大学大学院医学系研究科 老年病学 教授)
この度、楽木宏実先生(大阪大学大学院医学系研究科老年・総合内科学 教授)の後任として、本学会の第5代理事長に就任いたしましたので、この場を借りてご挨拶させていただきます。
私は1985年に東京大学医学部を卒業した後、同老年病学教室に入り、以後、一貫して老年医学の診療、研究、教育に従事してまいりました。本学会では、大内尉義元理事長(虎の門病院院長)のもと幹事として、そして楽木前理事長のもと副理事長として、多くのことを学ばせていただきました。その間、本学会の活動が医学界を超えて世間に注目され、学会が発展する様子を目の当たりにしてきました。超高齢社会を迎える我が国のみならず、国際的にも老年医学および本学会の重要性は増すばかりでしょう。そのような中、本学会理事長を拝命することは責任重大であり、身を引き締めてその任に当たるとともに、微力ながら精一杯努めさせていただく所存です。以下に若干の所信を申し述べます。
「健康長寿達成を支える老年医学推進5か年計画」の遂行
2018年6月に策定された5か年計画の5本柱である「Ⅰ. 老年医学・高齢者医療の普及・啓発」、「Ⅱ.フレイル予防・対策による健康長寿の達成」、「Ⅲ.認知症への効果的な早期介入と社会的施策の推進」、「Ⅳ.高齢者の定義に関する研究の推進と国民的議論の喚起」、「Ⅴ. 基礎老化研究の育成・支援」を着実に遂行していきます。副理事長として本計画策定の一端を担った身であり、現時点で本計画に異を唱えるつもりは全くありません。策定から1年が経過し、予定より早いか予定通りの進捗を示す事項が多いようですが、遅れている事項については委員会やワーキンググループの新設・改組も含めて早急に手当てをしていきたいと考えています。
老年病専門医および老年(内)科の認知度向上と普及
老年病専門医も老年(内)科も、高齢患者を専門に診る医師あるいはそのような診療科であることは誰にでもわかるでしょうし、その名前を聞いたことがあるという方もいるでしょう。そういう意味で一定の知名度はあると言えるのかもしれません。しかし、どのような病状になったら老年病専門医ないし老年(内)科を受診するのかと問われると、さてどのくらいの方が答えられるでしょうか?その答えは老年病専門医等のコーナーをご覧いただくとして、よく理解されていない、つまり一般への認知度はまだ低いのが現状でしょう。5か年計画の「Ⅰ. 老年医学・高齢者医療の普及・啓発」とも関連することではありますが、任期中に少しでも認知度を向上させるべく具体的なアクションを起こします。当然のことながら、普及も使命であり、地域医療に貢献するべく、老年病科専門医を増やすとともに、老年内科の看板を掲げる医療機関を増やすよう働きかけたいと思います。
ダイバーシティの推進
多様性は高齢者の特徴の一つであり、老年医学には学際的で多彩な視点が求められます。したがって、本学会のたゆまぬ進歩のために、学会の活動を支えるメンバー(学会員、委員会委員、役員等)も多様な人材で構成する必要があると考えます。この点は従来から取り組まれてきたことですし、5か年計画にも盛り込まれていますが、動きを加速させたいと思います。若手と女性の活用は言うに及ばず、定年後に高齢者医療の道に進まれた方々、そして医療・介護・福祉の各専門職にも参画していただきやすい環境作りを行うよう努力いたします。
その他にも行うべきことはたくさんありますが、5か年計画と重複しますので省かせていただきます。尚、副理事長は荒井秀典先生(国際・学術担当、国立長寿医療研究センター)と神﨑恒一先生(総務・診療担当、杏林大学)にお願いし、未熟な理事長を支えていただきます。どうかよろしくお願いいたします。
2019年6月吉日