事例集
症例3尿路感染症で入院となり、ポリファーマシーの是正を必要とした85歳女性
Scene1
85歳の女性であるA氏は前日からの39℃台の発熱と腰部痛により食事がとれなくなり、尿路感染症の診断で緊急入院となった(当院は初回)。既往歴として、3か月前に右大腿骨近位部骨折を発症し、右大腿骨頭置換術の手術目的にX病院で入院となったあと、回復期リハビリテーション病床のある病院への転院を経て2週間前に自宅に戻ってきたところであったが、今回の発熱で救急車を要請したところ当院に搬送となったという経緯であった。
A氏は約15年前よりX病院で高血圧症および拡張障害を主体とする慢性心不全、脂質異常症にて通院していたほか、自宅近隣のクリニックにて2型糖尿病や右膝関節症、不眠で通院を行っていた。屋内はゆっくりと歩行できるが、右膝の疼痛のため屋外の歩行は困難であり、要介護1の介護認定があるが、介護サービスは導入されておらず、同居の息子(61歳)が介護していた。息子は日中の仕事があり、退院後の介護環境整備のために今回の入院は長期化が予想される。身長は143㎝、体重は41㎏ (BMI 20.0kg/m2)で入院から数日後の収縮期血圧は平均で100~110mmHgであった。入院時の採血検査では、WBC 18,300/μL、CRP 14.2mg/dLと炎症所見のほか、BUN37mg/dL、Cre 1.45mg/dLと上昇を認め、脱水および腎機能低下が考えられた。HbA1cは6.7%であった。A氏が処方されている薬剤をすべて調べたところ、以下の通りであった。
投薬内容
X病院(循環器内科)
カンデサルタン8mg 1T 分1 朝食後 |
ニフェジピンCR 40mg 1T 分1 朝食後 |
ドキサゾシン0.5mg 1T 分1 眠前 |
フロセミド10㎎ 1T 分1 朝食後 |
アトルバスタチン5mg 1T 分1 夕食後 |
ラベプラゾール10mg 1T 分1 眠前 |
Y医院(内科)
インスリングラルギン 分1 眠前8単位 |
メトホルミン250mg 3T 分3 毎食後 |
ブロチゾラム0.25mg 1T 分1 眠前 |
エリスロマイシン200㎎ 2T 分2 朝夕食後 |
アンブロキソール15㎎ 3T 分3 毎食後 |
センノシド12mg 1T 分1 眠前 |
Z医院(整形外科)
ジクロフェナクナトリウム25㎎ 3T 分3 毎食後 |
レパミピド100mg 3T 分3 毎食後 |
メコバラミン500μg 3T 分3 毎食後 |
Scene1 Questions
- 1) A氏は多剤服用の状態にあるが、ポリファーマシーのリスクとして考えられるものを何か。
- 2) A氏における高血圧症、2型糖尿病の治療目標をどのように考えるべきか。