事例集

症例6多病のためにポリファーマシーとなった72歳男性が、転倒と意識消失を繰り返し、半年後、潜在的な神経変性疾患が明らかになった事例

Scene1

 72歳の男性であるS氏は、退職後、妻と2人で暮らしている。家事は主に妻が行い、患者は身の回りのことはできていた。3年ほど前から前方に転倒するようになり、徐々に意欲が減退した。6ヶ月前には自宅で後方に転倒し急性硬膜外血腫の診断を受けた。自然経過で血種は吸収されたが、その後も転倒を繰り返し、起立時には意識消失を起こすこともあった。動作時の胸痛の精査のために循環器内科に入院となり、冠動脈造影で3枝病変を認め、心エコーではEF39.4%, diffuse hypokinesis を認めた。転倒と歩行時のふらつき、意識消失の原因精査のために高齢者総合診療部に紹介された。既往として50歳代から狭心症があり、62歳で心筋梗塞に罹患した。55歳時に2型糖尿病と慢性腎不全の指摘を受け、65歳時に胃がんで胃全摘をうけた。教育歴は16年、商社勤務であり、嗜好は喫煙20歳から65歳まで、20本/日で機会飲酒となっている。

投薬内容
グリベンクラミド(2.5mg) 1T
分1 朝食前
メトホルミン(250mg) 2T
分2 朝夕食前
シタグリプチン(50mg) 0.5T
分1 朝食後
ロルメタゼパム(1mg) 1T
分1 朝食後
ブロチゾラム(0.25mg) 1T
分1 朝食後
アスピリン(腸溶錠)(100mg) 1T
分1 朝食後
クロピドグレル硫酸塩(25mg) 3T
分1 朝食後
メコバラミン(500mg) 2T
分2 朝夕食後
カルベジロール(2.5mg) 1T
分1 朝食後
硝酸イソソルビド(20mg) 2T
分2 朝夕食後
アローゼン(0.5mg)1T
分1 朝食後
インスリン アスパルト
2-2-2単位

Scene1 Questions

  • 1) S氏にはどんな老年症候群があるのか?
  • 2) S氏の老年症候群を理解する上でどのような検査が必要なのか?