事例集
症例7後期高齢者の健康診査で問題を指摘され、外来受診した82歳の種々の問題を抱えた地域在住高齢者
Scene1
82歳のA氏(男性)は、妻と息子の三人暮らしをしていた。後期高齢者の健康診査の結果、質問票でいくつかの問題が見られたため、かかりつけ医より詳しい評価を受けることを勧められ、息子に同伴されて老年内科を受診した。
かかりつけ医の紹介状には、50歳ころから高血圧があり、現在はカルシウム拮抗薬を服用していること、これまでに脳梗塞や狭心症を疑うようなエピソードはなく、手術や入院などの既往もなかったことが記されていた。また2年前から、地域に住む同世代の高齢者とグラウンドゴルフを週に2日行っていることも付記されていた。
診察室には、杖を使わずに歩いて入ってきたが、歩行はゆっくりで少し腰が曲がっているようだった。しかし歩き方そのものに異常はなく、バランスの悪さもなさそうであった。入室時の表情は、うつむく様子はなく、硬い表情でもなかったが、自らあいさつをすることはなく、同伴した息子も無言のままであった。
持参された健康診査の質問票は、次のような結果であった。
| 1 | あなたの現在の健康状態はいかがですか? | ふつう |
|---|---|---|
| 2 | 毎日の生活に満足していますか? | やや不満 |
| 3 | 1日3食きちんと食べていますか? | はい |
| 4 | 半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか? | はい |
| 5 | お茶や汁物などでむせることがありますか? | いいえ |
| 6 | 6か月間で2~3kg以上の体重減少がありましたか? | はい |
| 7 | 以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか? | はい |
| 8 | この1年間に転んだことがありましたか? | いいえ |
| 9 | ウォーキング等の運動を週に1回以上していますか? | いいえ |
| 10 | 周りのヒトから「いつも同じことを聞く」などの物忘れがあると言われていますか? | いいえ |
| 11 | 今日が何月何日かわからない時がありますか? | いいえ |
| 12 | あなたはたばこを吸いますか? | いいえ |
| 13 | 週に1回以上は外出していますか? | はい |
| 14 | ふだんから家族や友人と付き合いがありますか? | はい |
| 15 | 体調が悪い時に、身近に相談できる人がいますか? | はい |

担当医は自らあいさつをし、受診理由を確認した上で、質問票の内容確認と追加の質問を行った。患者は、かつて大工をしており、若いころに腰を痛めたことがあったが、そのことで医療機関を受診することはなかったという。受診時は息子とタクシーで来院し、自らは運転しないと話した。話し方や表情は温厚そうであったが、質問以外に自ら話を切り出すことはなく、無口な印象であった。本人とのやり取りに、同伴した息子は一切話に加わる様子はなかった。
身長154cm、体重45kg、血圧142/86mmHg、脈拍72/分(整)、呼吸数16回/分、握力21kg(最大値)、通常歩行速度0.87m/秒、Geriatric Depression Scale-15 (GDS-15) 11点、Mini Mental State Examination (MMSE) 27点(30点中)
身体診察上、腹部の圧痛や不快感はなく、心拍の異常や下腿の浮腫も認めず、明らかな異常を指摘することはできなかった。血液検査では、貧血やアルブミン値の低下はなく、総コレステロール値も正常範囲であったが、腹部レントゲンでは腰椎の側弯と椎体の変形が認められた。
Scene1 Questions
- 1) A氏の質問票の結果の中で、どのような問題を重視するか。また、その問題に関してどのようなことを確認するか。
- 2) 健診の質問結果を踏まえ、さらにどのようなことを確認するか。
- 3) A氏に認められる老年症候群を挙げよ。


