事例集

症例9かかりつけ医から糖尿病の管理目的で紹介され、高血圧、脂質異常症、肥満症を併せ持ち、多剤投与があるフレイルな85歳の高齢者の事例

Scene1

 85歳の男性。約20年前に市の健診で高血糖を指摘された。受診した病院で2型糖尿病と診断され、糖尿病の教育入院を行った後に、自宅近くにあるかかりつけ医で現在まで治療を継続されていた。糖尿病以外にメタボリックシンドロームに伴う高血圧と脂質異常症があり、それぞれ内服加療を受けている。
 元々肥満傾向であったが、ここ10年で活動量の低下もあり10kgの体重増加があった。
 最近、足腰が弱くなったと感じ、少しずつ外出する機会が減少していた。その結果、以前よりも食欲が減っており、疲れやすくなった。また、早朝や空腹時にしばしば冷汗を伴うふらつき症状を認めていた。入浴後や立ち上がり時にもめまい症状が出現し、ここ数ヶ月で3回ほど転倒している。治療薬が多く、最近時々飲むのを忘れてしまうことがあり、いくつかの内服薬は家の中に多量の残薬がある。同居している家族が最近の状態の変化を心配し、そのことをかかりつけ医に相談したことをきっかけとして、糖尿病に対する精査および管理目的で当院に紹介になった。

身長166cm、体重84.8kg、BMI 30.8kg/m2、BP 128/56mmHg、 PR 68/分、整診察所見上は特記すべき異常所見なし 手足の先に軽いしびれ症状あり

投薬内容
ノボラピッド30ミックス®
分2 朝夕食直前
朝 16単位 夕 10単位
メトホルミン250mg 3T
分3 毎食後
ボグリボース0.2mg 3T
分3 毎食直前
カンデサルタン8mg 1T
分1 朝食後
アムロジピン5mg 1T
分1 朝食後
ドキサゾシン1mg 1T
分1 夕食後
アトルバスタチン5mg 1T
分1 夕食後
モサプリドクエン酸塩5mg 3T
分3 毎食後
ベタヒスチンメシル酸塩6mg
3T分3 毎食後

採血検査では空腹時血糖 92mg/dl、 HbA1c 6.3%。肝機能は異常なし。
腎機能はCRE 0.72mg/dl、eGFRcr 77.6ml/min/1.73m2、シスタチンC 1.24mg/dl、eGFRcysは51.4 ml/min/1.73m2であった。
LDL-C 108mg/dl、TG 148mg/dl、HDL-C 38mg/dl
尿検査では尿糖(-)、尿蛋白(-)であった。

Scene1 Questions

  • 1) この症例における医学的な課題および問題点は何か。
  • 2) この症例のめまいやふらつきの原因としてどのようなことが考えられるか。
    また、めまいやふらつきは高齢者にとってどのような問題があるか。