事例集
症例12意識障害と右不全片麻痺を伴った心原性脳塞栓症により緊急入院となった81歳男性に対し、易転倒性や腎機能障害、フレイルにより抗凝固療法の適用について検討を必要とした事例
Scene2
経胸壁心エコー検査を施行したところ、左室収縮能は全周性に保たれていたが(EF 70%)、明らかな心内血栓は認めなかったものの、左房の拡大を認めた。心原性脳塞栓症の再発予防として担当医は直接経口抗凝固薬のエドキサバン口腔崩壊錠30㎎ 1T分1朝食後で処方開始した(低体重、腎機能低下のため30mgを選択)。また、CKDがあることから脊柱管狭窄症の疼痛管理の方法としてセレコキシブを中止しアセトアミノフェンに切り替えた。
ところが入院14日目の早朝、A氏はトイレに行こうとした際にベッドの脇で転倒し、起き上がれず助けを呼んでいるところを看護師により発見された。意識は清明で、頭部を挫傷し出血をしており、すぐに止血・消毒の処置と緊急頭部CTの撮影が行われた。CTでは幸い頭蓋骨骨折や頭蓋内出血は認められなかった。転倒の外的要因として病室の暗さが、内的要因として右不全片麻痺と腰部脊柱管狭窄症による疼痛、半側空間無視による視野の狭さ、さらに入院に伴う廃用などを担当医は考え、介助歩行の徹底と疼痛コントロール、リハビリ継続による身体機能の改善などを進めていき、継続するにあたり安全な薬物療法を行うべく見直しを行っていくこととした。A氏は20日目に回復期リハビリテーション病床のある病院に転院することとなり、そこを退院後は再び当院にて外来通院による治療を継続していくこととなった。
Scene2 Questions
- 1) A氏は今後ADLが低下しないようどのように指導すべきか?
- 2) 易転倒性を有する高齢患者に対し、薬物療法の注意点は何か?