事例集

症例137年間にわたり多彩な症候を呈しながら高カルシウム血症、骨粗鬆症ならびに脆弱性骨折を発症した79歳女

Scene1

 79歳女性A氏は腰背部痛を主訴にB病院整形外科に来院した。7年前に夫が亡くなってから独居となり、その頃から気分の落ち込み、不眠が認められ、近医精神科を受診、うつ病の診断にて抗うつ薬ならびベンゾジアゼピン系薬剤の内服が開始された。6年前、尿路結石を指摘され、B病院泌尿器科受診、通院加療が開始された。またこの頃より頻尿を訴えていたためソリフェナシンが開始となった。3年前、自宅にて転倒、B病院整形外科受診、左恥骨骨折の診断を受けた。2年前に肺炎疑いにてB病院呼吸器内科入院。この時にCOPDも指摘された。
 今回腰背部痛を主訴に来院し、整形外科が受け持ちとなる。A氏の母親は82歳大腿骨近位部骨折を契機に死亡している。20歳から70歳まで1日10本程度の喫煙歴があった。身長は25歳時と比較し6.5 cm低くなっていた。整形外科にてXp施行したところ胸腰椎に多発する圧迫骨折を認めた。採血ではCcr: 28 ml/minと腎機能低下を認めた。その一方で整形外科医はこの時点での血清カルシウム値や骨代謝マーカーは測定を行っていなかった。直近の血清カルシウム値測定は3年前で血清カルシウム 10.1 mg/dl (血清アルブミン 2.8 g/dl. 補正カルシウム値 11.3 mg/dl), 血清リン 2.1 mg/dlと3年前の時点で軽度高カルシウム血症ならびに低リン血症を認めていた。
 DXA法による骨密度測定にて右大腿骨全体BMDにてYAM43%と顕著な骨量低下認めた。腰椎骨密度(L2-4)は変形あるがL2-4 YAM58%であった。B病院整形外科医師は原発性骨粗鬆症と診断し、アレンドロネートまたはリセドロネート内服開始を検討し、退院後の引き継ぎ予定医師である老人保健施設Cの施設長(老年病専門医)と電話で相談した。

投薬内容
タンドスピロン10mg 1T
分1眠前
クアゼパム15mg 1T
分1眠前
ゾルピデム5mg 1T
分1眠前
酸化マグネシウム1g 2T
分2 朝夕食後
ラベプラゾール10mg 1T
分1朝食後
ソリフェナシン5mg 1T
分1夕食後

Barthel Index 45/100、MMSE 26/30

Scene1 Questions

  • 1) A氏の骨粗鬆症の危険因子は何か。
  • 2) B病院整形外科の診断プロセスに問題はないか。